何の科学的根拠もないのに「これがいい」と書かれ宣伝されているスキンケア商品が多いですね。
実は逆に悪化したり、辞めると悪化してそのスキンケアから抜けられなくなることだってあります。
肌トラブルで多くの悩みを占めるであろうニキビ。
ニキビに効果のある化粧品も売られているのもありますね。本当にその情報正しいと思いますか?
それに、それ本当にニキビですか?ニキビとよく似た別のものではないの?
今回お伝えしたいことは「ニキビ」と「面疔」の原因と対策についてです。面疔を知らない人は多いのでは二でしょうか。
スキンケアに力を入れている人でもニキビの原因はアクネ菌じゃないの?となんとなく知っている人は多いかもしれません。
しかし、それは間違いです。が完全に間違いとは言えません。
それは、アクネ菌の働きを理解すればわかります。
またアクネ菌の働きまで知っている方は少ないのではないでしょうか?
この記事を理解することでニキビの原因がわかるようになります。
さらに、ニキビができたとしても改善方法が自分自身で考えられるようになりますよ。
肌のおける細菌の役割
実はこの細菌達はスキンケア(肌の健康)を維持する上でとても重要な働きをしてくれています。
細菌の一番の役割というのは肌の「保湿と肌を弱酸性に保つこと」です。
細菌はその脂質を合成することで保湿と弱酸性を保つことを担ってくれています。
このことを前提に記事を読み進めて頂けれればと思います。
細菌の種類
ニキビに関係する細菌を挙げていきます。
角質層(常在細菌叢)を形成する細菌
まずは、肌に常在し、良い影響を与えてくれる細菌を紹介します。
表皮ブドウ球菌( スタフィロコッカス エピデルミディス:Staphylococcus epdermidis )
酸素があってもなくても生きていける細菌です(通性嫌気性グラム陽性球菌)。
一般の方はグラム何性以降は気にしなくて良いですよ。
主に皮膚や鼻腔、毛穴に常在しています。
表皮ブドウ球菌は汗(アルカリ性)や皮脂をリパーゼで分解して、グリセリン(グリセロール)や脂肪酸を作り出します。
なぜそれをするかというと、
アルカリに対しては強くないからです。 肌がアルカリ性化すると生きていけなくなりますし、 他の細菌の増殖を促してしまいます。
表皮ブドウ球菌からしてみれば、自分で弱酸性の環境を作ることは、自分が生きていくために必要なんです。
脂肪酸というのは弱酸ですから、肌を弱酸性に保つことができます。
また、脂肪酸(皮脂層)は肌からの水分蒸発を防いでくれます。
面白いことにこの細菌は、ラウリン酸やオレイン酸などの遊離脂肪酸があると発育が抑制されます。
実は皮脂というのは中性脂肪(トリグリセリド:TG)であり、トリグリセリドの組成にオレイン酸が半分ほど含まれているのです。
つまり、皮脂があるとこの細菌は仕事をサボるんだね。
既に良い環境だもんね。
グリセロールは、皮膚のバリア機能を保つもとになります。
皮膚のバリア機能について詳しくは知りたい方はこちらから。
アクネ菌 ( プロピオニバクテリウム アクネス:Propionibacterium acnes)
酸素が無いところでしか生きていけない菌です(偏性嫌気性グラム陽性桿菌)。
逆に言えば酸素があると死んでしまいます。
この細菌は酸素を嫌うために毛穴や皮脂腺(皮脂を分泌する通り道のこと)に存在しています。
皮脂を餌にプロピオン酸などの脂肪酸を作り出すことで皮膚表面を弱酸性に保ち、皮膚に付着する病原性の強い細菌の増殖を抑える役割を担っています。
これに関しては先程の表皮ブドウ球菌と同様の働きを持っています。弱酸性に肌を保つにはアクネ菌も必要なんです。
一般的にニキビの原因と言われていますが、増殖しなければニキビの原因菌になりません。
しかし、皮脂の分泌量が増えたり、何かの異常で毛穴をふさいだりすると、アクネ菌が過剰に増殖し炎症(cAMP産生)を引き起こしてニキビになります。
つまり、ニキビの原因は「皮脂の増えすぎ」です。
皮脂の増えすぎ→皮脂腺が詰る→皮脂腺の嫌気性化が進む→細菌増殖→炎症→免疫反応(ニキビ)→正常化
アクネ菌は酸素が無いところに生息していると言いましたので、皮脂によって皮脂腺が塞がれることは、細菌の増殖を促して、それに適した環境にしてしまいます。
解決策は、皮脂を増やさないことです。
ではどうやって皮脂を増やさないように出きるでしょうか?
やはり洗顔が大切ですが、その回数と洗い方が重要です。
その回数とは、夜の入浴時の石鹸を用いた洗顔の1回で十分です。洗い方は、角質層の細胞を落とさないように、表面をなでるように洗うだけで十分です。
ただし、皮脂を多くしすぎないことだけではよくならず、水分の調節も必要です。
洗顔後は水分が逃げやすい状態になっていますので、水や飲み物等の水分補給はきちんと行い、身体の内側からも水分を供給させることが大事です。
と言っても、特に乾燥肌の人は洗顔後すぐに顔の肌が突っ張る感じがあると思います。
そんな時は、気休めですが、加湿器を使って部屋の湿度を上げましょう。
ニキビ予防の to do リスト
- 石鹸を使った洗顔は夜の入浴時のみ行いましょう(朝のみ入る場合はその限りではない)
- 洗顔の仕方は、優しくなでるように「Tゾーン」を中心に。ゴシゴシ禁止。
- 入浴後は、コップ1杯の水分と取りましょう
- 夜はアミノ酸を含む化粧水を積極的に使うのがよいです。
- 乾燥が気になる場合は加湿器で部屋を加湿しましょう
- 朝の洗顔はぬるま湯で十分
- 朝は保湿力のある化粧水を付けましょう
ではニキビができてしまったらどうすればいいでしょうか?
皮脂が多いということですから、洗顔は普段と変わらず行いましょう。よく洗わなければいけない箇所は鼻を中心として「Tゾーン」と言われるところです。
また、ニキビがあるうちは化粧水を使わないことが原則です。
なぜかというと、化粧水には脂肪酸などアクネ菌の栄養となる脂質が含まれているためニキビの回復を長引かせるだけです。
ニキビができたらどうするべき?
- 石鹸を使った洗顔は「Tゾーン」を中心に行う
- 石鹸は弱酸性のみのものを使おう
- ニキビ部分は洗顔しない
- 洗顔後の化粧水・乳液は絶対使用しない
皮脂層(一過性細菌叢)
黄色ブドウ球菌( スタフィロコッカス アウレウス:Staphylococcus aureus )
この細菌は酸素があってもなくても生きていけます(通性嫌気性グラム陽性球菌)。
皮膚表面(皮脂層)や鼻腔、毛穴に住んでいます。スタフィロコッカス属の中では病原性が高い菌です。
ただし、存在しているだけでは問題はありませんが、増殖すると「面疔」という炎症を起こしてしまいます。
この「面疔」というもの、ニキビと見間違うことがありますが、原因となる菌が異なります。
この細菌に対して私達がするべき予防法は
「皮膚をアルカリ性にしない」ことです。
この菌はアルカリ性下でも容易に生存でき(耐塩性)、アルカリ性に耐性がない他の菌は増殖・生存できないために、空いたスペースにこの細菌が増殖して毒素を出し炎症を起こします。
皮膚をアルカリ性にしなければいいんだね!
でも、どうやったらアルカリ性にならないようにできるの?
皮膚がアルカリ性に偏る要因には
- 多汗
- 洗いすぎによる常在細菌叢の減少
- アルカリ性洗剤の使用(不健康な肌の場合は特に)
- 防腐剤の強い化粧品の常用
などが原因として考えられます。
一つずつ見ていきましょう。
多汗
汗は塩類を含んでいてアルカリ性ですので、多く汗を掻けば掻くほど、常在細菌は多く汗を栄養源とし脂肪酸を合成できます。
しかし合成のキャパシティーを超えると合成と汗の量が釣り合わず皮膚はアルカリ性化していきます。
アルカリ性に耐えられない常在細菌は増殖できず代わりにアルカリ性に耐性のある黄色ブドウ球菌が繁殖します。
肌は弱酸性ではなくなり、肌トラブルへと繋がっていきます。
汗をかいたらすぐにふき取りましょう。夏の季節は特にです。汗疹などの別の障害を引き起こしますし早めの対処が必要ですね。
洗いすぎによる常在細菌の減少
この「洗いすぎ」というのは洗う回数も多く、皮膚にかかる圧力も強いという意味で捉えてください。
黄色ブドウ球菌は皮脂層などの皮脂の多い部分に付着し生息していますので、この細菌は洗顔で十分に落とすことができます。
角質層に存在する表皮ブドウ球菌も流してしまう頻回の洗顔は控えるべきでしょう。
洗いすぎによって皮脂層だけでなく角質層の常在細菌も落としてしまうと、脂肪酸を合成できず肌を弱酸性に保つことが出来なくなります。
そこに汗などが加わると脂肪酸は作るのが間に合わず、肌はアルカリ性のままです。
さらに、強く洗うということは細菌だけでなく、角質層の細胞自体にもダメージを与え角質が無駄に剥がれます。
剥がれると肌のバリア機能も保てなくなり感染されやすくなります。
洗顔は皮脂層表面の汚れと黄色ブドウ球菌を落とすんだという意識で行いましょう。
石鹸や洗顔料を用いた洗顔は夜の入浴時の 1 回で十分です。
次の日の朝にテカリを抑えるためにささっと軽くぬるま湯(37℃付近)でお湯洗いすれば十分です。
なんで、ぬるま湯なんですか?
温度が高すぎると表皮からの水分の蒸発を招くため、適度に落とすには ヒトの体温に近いぬるま湯が効果的なんです。
温めたフライパンに固めた牛脂を置くと解け出るのと同じ原理です。
私個人的には、水でも良いと考えています。
水であれば温度が低いので皮脂を流してしまうことはまずありませんから、おのずと保湿はできるはずです。
その後に表面の水分をタオルでふき取る感じではなく、軽く押し当てて取り、保湿剤を塗ることです。
保湿剤としてはワセリンのほか、尿素、セラミド、脂肪酸などが含まれているものが良いです。
尿素製剤は肌トラブルがあると刺激を感じる場合があるので注意しましょう。
洗顔時は本当に軽めで十分です。加えて朝の洗顔量を用いた洗顔は必要ありません。
アルカリ性洗剤の使用
汗と同様にアルカリ性物質が直接肌に来ることで、それを主成分として常在細菌が脂肪酸を合成しています。
ただし、多すぎる場合は逆効果で対応ができなくなります。
それに、角質層内の脂肪酸などで構成されたラメラ構造を壊してしまい、余計に肌を乾燥させてしまいます。
それに加えて、免疫や肌の恒常性が極度に低下している場合が当てはまりますが、その機能が上手く果たせないと弱酸性に戻すのが遅い、または戻せない状態となります。
仕組みから考えて、アルカリ性になっている場合は弱酸性に戻す手間が増えます。
その分基底細胞の角化、天然保湿成分の分泌、角化細胞間脂質合成などに手が回らず、いつまで経ってもできないままになり肌の環境は改善しなくなります。
その結果、最初は減っていた黄色ブドウ球菌が増殖し始めることに繋がり、面疔ができる環境を作ってしまうのです。
使用している洗顔料が、アルカリ性のものかどうか確認してみましょう。
防腐剤入りの化粧品の常用
特に洗顔料や化粧水についてですが、石鹸や洗顔料の中には皮脂を落とすため界面活性剤が入っており、皮脂を落とせば汚れも皮脂層に付着する病原性のある細菌も排除できます。
その後の肌に残っている細菌のほとんどは常在細菌叢の細菌です。
つまり、洗顔料や化粧水に防腐剤は必要ないわけです。
ただ、製造工程の段階で落下菌などが混入し、繁殖するのを防ぐために防腐剤が入れられているのです。
強い防腐剤を含む化粧品を使えば、常在細菌も死滅させかねません。
強い防腐剤を含む洗顔料を使う場合は、洗顔後は水で洗剤を良~く落とすことが大切です。
さらに言えば、防腐剤を含んでいない or 配合量が少ない or 低抗菌力の防腐剤が入っている洗顔料を選ぶべきでしょう。
配合量が少ないか多いかは成分表を見ればわかりますよ。成分表は多い順に左から書かれていますからね。
ただ濃度まではわかりませんがね。
「パラベン」と表記されている成分があればそれが抗菌剤です。含まれているのか、または複数含まれているのか確認してみましょう。
細菌以外にニキビの発生に関与するもの
主に4つの原因が考えられます。
- 睡眠不足
- ビタミンB群(メインはビタミンB2)不足
- 女性ホルモン(黄体ホルモン:プロゲステロン)の分泌
- 食生活の偏り
睡眠不足は、ケラチノサイトのターンオーバーにかかる時間が長くなるということです。つまり、美肌への道は遠ざかりますね。
睡眠中はターンオーバーを進め、基底層での細胞分裂を行い、角質層への細胞供給を整えている大切な状態です。
また、睡眠は身体の様々に影響を与えますので、言わずもがなでしょう。
睡眠は 6時間以上取るとと良いとされています。
ビタミンB2は、脂質の分泌を適切に調整する働きがあります。また、ビタミンCやビタミンB6(ピリドキサルリン酸)、ナイアシン(ビタミンB3)など合わせて摂取するとより効果的です。
積極的に食事から摂取しましょう。
特に女性でですが、女性ホルモンの一つである黄体ホルモン(プロゲステロン)は、黄体形成ホルモン(LH)の作用を受けて、 排卵後、副腎皮質から徐々に分泌量が増えて1週間程度で最高濃度となりまた徐々に減少していきます。
黄体形成ホルモン分泌から次の月経までの時期を「黄体期」といいますが、この時期は、黄体ホルモンが多いため、皮脂の分泌も増加します。
食生活の偏りは、肌に限ったことではなく、どんなことにも関係していますので、言うまでもありません。バランスよく取ることが大切です。野菜と果物は少しでもいいので必ず摂取しましょう。果物は前述したビタミン類の摂取にも関係してきます。
お肉も必ず取って下さい。基底層の細胞を作るために必要なタンパク質の素であるアミノ酸が摂取できませんから。
まとめ
いかがだったでしょうか。
細菌バランスの崩れが肌トラブル(主に面疔とニキビ)の原因と言うことをお伝えしてきました。
ニキビの本当の原因は皮脂が多いこと。
皮脂を多くしないことがニキビの一次予防になるわけです。
決してアクネ菌が悪いわけではありません。むしろ良い働きをしてくれています。
注意点はリストにまとめてありますので、もう一度参照しておきましょう。
面疔の原因は黄色ブドウ球菌の増殖。
その対策は、表皮ブドウ球菌を減らさないようにして弱酸性を維持することが大切です。
弱酸性を維持することは黄色ブドウ球菌や真菌などの繁殖を防ぐことにつながり、皮膚のバリア機能を保つ意味でとても重要です。
皮膚常在細菌のバランスが壊れてしまわないように注意しましょう。
ヒトと細菌は共生関係です。それを忘れてはいけません。
ただ、全てが細菌で補われている訳ではありませんので、そこは注意が必要です。
参考文献
1) D’Argenio V, Salvatore F, The role ofthe gut microbiome in the healthyadult status. Clin Chim Acta 2015. 451 (Pt A): p. 97-102. 10.1016/j.cca.2015.01.003.9)皮膚由来抗菌ペプチドであるカテリシジンLL-37の皮膚バリア機能調節に対する役割
2) ヒト皮膚における遊離脂肪酸の動態に及ぼす皮膚常在細菌ならびに化粧品の影響に関する研究
4) 目に見えないヒト常在菌叢のネットワークをのぞく | 宇宙航空環境医学 Vol. 49, No. 3, 37-51, 2012
5) 最新臨床検査医学講座 臨床微生物学, 医歯薬出版株式会社, (2017)